No.17203 Re: 治療効果を評価する研究 【青木繁伸】 2012/07/19(Thu) 11:41
インターネット上の情報の正確性については議論のあるところでしょうが,3 の和訳は,「前向きコホート調査」,5 は「交差試験(クロスオーバー試験)」ということで,実際に調べて比較すればわかると思います(英語そのままで検索するのもよいでしょう)。
3 は時間軸に沿って研究するという点では同じですが,治療効果を見る研究とは規模が違うし,調査対象集団の決定過程が違います。また,どちらかというと治療 効果というよりは,影響評価(例えば喫煙と肺癌,食塩と高血圧など)のような場合が多いでしょう(フッ素と虫歯予防という場合は効果の評価になります が)。
ということで,2,5が適切と思います。
No.17204 Re: 治療効果を評価する研究 【raraki】 2012/07/19(Thu) 12:08
実験的研究として,とありますから,交絡因子となる可能性のある背景を積極的に制御可能ということです。
観 察研究としてのコホート研究の場合,基本的に治療方法(あるいは治療の有無)の選択は患者の希望と医師の判断,裁量とに任せられます。治療以外の背景が異 なる可能性が少なくありません。もちろん解析段階で可能な範囲で制御しますし,また追跡する対象者の選定も行われることはありますが,よく制御された RCT, crossover studyに比べるとやはりバイアスの入り込む余地があります。
ということでいかがでしょうか?
No.17205 Re: 治療効果を評価する研究 【回復期】 2012/07/19(Thu) 13:10
青木様,raraki様,さっそく回答頂きありがとうございます。2,5が適切ということですね。
確認ですが,
治療効果を評価するための研究手法として,適切なのはどれか,2つ選べ
または
治療効果を評価するための研究デザインとして,適切なのはどれか,2つ選べ
という設問であっても2,5と考えてよかったでしょうか?宜しくお願い致します。
No.17206 Re: 治療効果を評価する研究 【青木繁伸】 2012/07/19(Thu) 16:24
「研究手法」も「研究デザイン」も同じでしょう?違いますか?
他に「研究計画」とか「研究方法」とかも同じでしょう。
No.17207 Re: 治療効果を評価する研究 【raraki】 2012/07/19(Thu) 18:01
研究手法,研究デザインについては私も青木先生と同じ考えです。「実験的研究」という但し書きがなくても正解は 2,5で良いのか?という質問でしたら,その通りと思います。出題者の意図としては,(実験研究・観察研究を問わず)より高いエビデンスレベルを得られる 手法・デザインを適切と考える,ということでしょう。
もっとも,実験的研究につきまとう倫理,予算,マンパワー,および(ヒトを対象とす る研究という前提ですが)被験者の確保等々の難題を考慮に入れると,「適切なのは」という問い方にはちょっと引っかかります。私が出題するなら,医師国家 試験と同様「治療効果を検証する研究方法で最もエビデンスレベルが高いのはどれか」という問題文とし,一択となるような選択肢を選ぶでしょうか。
No.17208 Re: 治療効果を評価する研究 【青木繁伸】 2012/07/19(Thu) 22:02
> 出題者の意図としては,(実験研究・観察研究を問わず)より高いエビデンスレベルを得られる手法・デザインを適切と考える,ということでしょう。
そのような,「高度な判断」は不要でしょう。
単純な消去法で,2つが残るでしょう。
そもそも,このような出題においては短い文章で,完璧を期す記述は無理でしょう。逆に言えば,明らかにおかしいという部分を含む選択肢を作るという戦略をとるというのが常套手段。
それに対するには,明らかにおかしいものを除くという戦略で十分でしょう。
実際,この問題でも明らかにおかしいのを除くと,正解にたどり着くという単純な問題構成になっていると思います。
1.Case-control study
こ れは,いわゆる「後向き調査」。結果の分かっている集団で,原因がどうであったかということを調べる。言ってみれば,「結果が有効か無効」か別に,「原因 の有無」を調べるもの。「後向き調査」と後述の「前向き調査」の利点・欠点を比較すると,治療効果の研究には不適であることは自明。
3.Prospective cohort study
前 にも言ったが,今回のコンテキストでは factor-control study とも言えるもの(当然,両者の細部は異なるといえるが)で,「前向き調査」,「追跡調査」の一種。出発時の調査対象者の決定法,対象者数の規模が異なる。 相当な数の母集団を対象にして,長期間の観察の末に,原因の有無別に結果の有無を比較する。例えば,「喫煙の有無」で「肺癌発生の有無」を比較するような こと。通常,治療効果の判定には,それほどのサンプルサイズは必要としないというか,そんなに大きいサンプルサイズを準備できない。
4.Cross-sectional study
これは,「断面調査」。ある時点で,「原因」と「結果」について調査するもの。いわゆる,アンケート調査の一種。例えば,「今までにタバコをどれくらい吸いましたか」と「あなたは肺癌ですか」というのを同時に聞くと言うようなこと。
残るのが正解。
残ったものの記述(定義)には不正確,不十分な部分は存在する。しかし,そのほかの選択肢よりは「不適切度合い」が低い。
なお,
> ,医師国家試験と同様「治療効果を検証する研究方法で最もエビデンスレベルが高いのはどれか」という問題文とし,一択となるような選択肢を選ぶでしょうか。
ということに関してですが,この5つの選択肢から「一択となるような選択肢」を選ぶのは困難かと思います。つまり,それぞれの記述は別の基準でなされているので,これだけの記述では,どちらが優れているとは判断できません。
一択にするなら,どちらかを不的確とするように文言を加える(除去する)必要があるでしょう。
No.17210 Re: 治療効果を評価する研究 【raraki】 2012/07/20(Fri) 06:04
ああすみません,一択となるような選択肢を選ぶのは受験者でなく出題者のつもりです。
「一択となるように選択肢を変更する」と書くべきでした。
No.17223 Re: 治療効果を評価する研究 【回復期】 2012/07/20(Fri) 18:32
青木様,raraki様,丁寧に解説頂き,理解できました。有難うございまいた。
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