No.17329 Re: メタアナリシスについて 【青木繁伸】 2012/08/20(Mon) 18:07
> 標準偏差の12.16がどのような計算で算出されたのかわかりません。
> どのような数式が考えられるか教えていただけないでしょうか?
簡単な数値例を使って説明しましょう。
6組の対応のあるデータx, y および z=y-x の以下のようなデータを考えます。x y z平均値と標準偏差は以下のようになる。
1 66 75 9
2 46 63 17
3 40 50 10
4 46 69 23
5 58 61 3
6 43 43 0x : mean = 49.83333 , sd = 10.00833質問は,z の標準偏差 10.63328 がどのように計算されるかということです。
y : mean = 60.16667 , sd = 11.87294
z : mean = 10.33333 , sd = 8.57127
解答を示す前に,対応関係を崩したデータについて考えましょう。以下のデータは,x だけをランダムに並べ替えたものです。x y zx と y の平均値と標準偏差は計算できます。
1 46 75 29
2 46 63 17
3 43 50 7
4 66 69 3
5 58 61 3
6 40 43 3x : mean = 49.83333 , sd = 10.00833
y : mean = 60.16667 , sd = 11.87294
先ほどのデータ例と,全く同じになります。
では,z = y-x の平均値と標準偏差はどうなるか...
以下のようになります。z : mean = 10.33333 , sd = 10.63328
平均値は前のデータ例と同じになります。
標準偏差は,違いますね。
つまり,対応のある2つの変数の平均値と標準偏差だけでは,変数の差の標準偏差は求まらないということです。
では何が必要か。それは,ふたつの変数の間の「共分散」です。
V(x), V(y) を x, y の分散,σxy を x,y の共分散とすると,差の分散 V(x-y) は,
V(x) + V(y) - 2σxy
となりますね。
x, y の共分散 = x,y の相関係数 × x の標準偏差 × yの標準偏差
なので,相関係数がわかっていてもかまいません。
前のデータ例では相関係数 = 0.7054998 なので,z の標準偏差はsqrt(10.00833^2 + 11.87294^2 - 0.7054998 * 10.00833 * 11.87294 * 2) = 8.571271
後のデータ例では相関係数 = 0.5388728 なので,z の標準偏差はsqrt(10.00833^2 + 11.87294^2 - 0.5388728 * 10.00833 * 11.87294 * 2) = 10.63328
いずれも,計算したとおりですね。
というわけで,共分散(相関係数)の情報がないかぎり,差の標準偏差は求めることができません。
No.17330 Re: メタアナリシスについて 【医療従事者】 2012/08/20(Mon) 18:29
青木先生,懇切丁寧な説明をありがとうございました。
よく理解できました。
差の標準偏差は共分散の情報がないと求めることができないのですね。
多くの文献では平均値±SDしか情報がないことが多いです。
メタ分析を行っている人は不足した情報を著者に確認しているのでしょうね。
または共分散がないと仮定して計算するか・・・ですかね。
大変勉強になりました。ありがとうございました。
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